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毛皮は悲しい

そろそろ日本に帰る航空券を買わないと、と思ってます。帰国中にやりたいことのひとつは買い物です。インターネットで注文して友達の家に送っておいてもらう、帰国時に受け取る、というパターンが多くなってきました。
冬のコートも買い換えたいし、せっかくだから少しいいものを、と思って日本のインターネットでカシミヤコートをチェックしたら・・・。

ほとんどのコートの襟に本物の毛皮が使ってあるじゃないですか! まるでカシミヤのコートにはミンクや銀キツネ(シルバーフォックス)の襟がつくのが当然、と言わんばかり! 毛皮の襟のないコートは少ない。かなりガックリ来てます。

みなさま、どうぞ毛皮は買わないでください。買う人がいなくなれば毛皮のために動物たちが殺されることもなくなるのです。

毛皮の襟やフードのふちだけではありません。手袋についている毛皮、ブーツの飾り、髪飾り、帽子の飾り、キーホルダー・・・、あらゆるところに毛皮が使われています。動物たちは多くの場合、生きたまま皮をはがれたり、残酷な罠で捕獲されたり、つまり苦しみながら死ぬのです。

ペットショップや悪徳繁殖屋の犬猫販売と同じです。買う人がいるかぎり、悪質繁殖はなくなりません。

毛皮を見たら、それを生前にまとっていた動物を思い描いてください。お友達や同僚のかたとそれを話題にしてください。本当の動物愛護は、私たち一人ひとりの心の中からスタートします。

愛しのオクトパス

「愛しのオクトパス」という本を読みました。サイ・モンゴメリーという女性の研究者が書いた一冊で、オクトパス、つまり、タコのお話。

「海の賢者が誘う意識と生命の神秘の世界」と表紙にあります。

それまで持っていたタコに関する認識がこの本を読んだ後、ガラリと変わってしまいました。

どういうふうに変わったのかって?

タコが食べられなくなってしまったのです。鮮魚売り場にタコがあると、目を背けてしまいます。

知りませんでした、タコは個人を認識して、好きな人にはやさしくからみついてくる、ってこと。タコは吸盤で個人を「味わって」知る、ってこと。そして、目でも個人を見分けることができる、ということも。

読み進めるうちに、タコが海に住む犬のように思えてきました。

「タコは美味しい」から「タコは愛おしい」に変化です。

とにかく読んでみてください。
知らなかった世界を知るいいチャンスです・・・

映画 「ライフ オブ パイ」 Life of Pi

先日、「ライフ オブ パイ」という冒険ファンタジー映画を観ました。オーストラリアからカナダに、経営していた動物園の動物たちを連れて移住しようと貨物船に乗り込んだインド人一家。しかし大嵐に遭い、貨物船は沈没。パイという名の青年と1頭のベンガル虎だけが生き残り、救命ボートで漂流するというストーリーです。
スピリチュアルな言葉やシーンもあり、それはそれですばらしかったけれど、私が最も魅了されたのは色彩でした。

英国で活躍した霊能者ハロルド・シャープさんも書き、霊能者のポールからも聞いていたこと。それは天国の美しい色でした。
天国(霊界)では地上で私たちが見ることのできる色彩以上の色彩があり、「光」に包まれているということ。地上の私たちが天国にいる人たちや動物たちのために祈れば、光はますます強く美しく光るのだということ。

「ライフ オブ パイ」は、現実の世界では実際に見ることが難しい色と光を見せてくれます。「なんて美しい……」とうっとり見入ってしまいました。
夜光虫で光り輝く海がその中のひとつ。私は夜光虫で輝く海を、マレーシアの離れ島に行くために乗った小さな船から少しのあいだ見たことがあります。そのときは、海に金銀の砂のようなものが混じっていてそれが月で反射しているのか?と思ったのでした。

真夜中の静まりかえった海で青年は輝く海の美しさのとりこになるのですが、そのシーンを見ていて、以前ここでも紹介した映画「コンタクト」という映画の1シーンを思い出しました。本人も自分がどこにいるかわからない。地上ではない、霊界みたいなところに来てしまったわけですが、主人公のエリーが手で「空のような空間」を撫でるとそれが波のように動く……そのシーンが、夜光虫が光り輝く太平洋で海の水をすくいとっては見入ってしまう部分と重なったわけです。

「ライフ オブ パイ」は、単なる冒険映画でもファンタジー映画でもないです。遠い過去に経験したのに忘れていたものを思い出させてくれる、というか……、それが何なのかということまではわからないのですが観終わってから、不思議な気持ちになったのでした。

ペットたちは死後も生きている

ドイツは秋がもうすぐそこです。木立を通過してくる風に枯草や野草の匂いが混じっています。日差しが日増しに弱くなり、夜の10時に見ていた夕焼けも今では夜の8時です。

秋は愛犬コロが天国に旅立った季節であり、毎年今頃になると、その時の思いが蘇ります。

秋の風の中にコロがいる……。目を閉じて、コロの柔らかくて暖かい身体を(あちらの世界で)抱きしめます。

日本教文社から出版された「ペットたちは死後も生きている」は20刷を超えました。当時、編集部の何人かのかたが、何が何でもこの本を世に出したいと押してくださったおかげで、会議を何度も突破することができ、ついに出版されたのです。「次の会議ではもしかしたらパスしないかもしれない」と毎回ドキドキして知らせを待っていました。

編集者の方を始め、この本を通じていろいろな方と知り合いになりました。「こんな本を読んだ」とその本のことを話された方に、「実は翻訳をしたのは私です」と告白して、その偶然の出会いに驚いたことも一度や二度ではありません。その方々とは今でも親交が続いています。愛犬コロが連れてきてくれた一生の友人たちです。

出版社の編集部でお世話になったT氏は、「この本の翻訳は喜び以外のなにものでもなかったから売れるのです」とおっしゃいます。私もそう思っています。私が初めてこの本を読んだ時、悲しみの涙が喜びの涙に変わったのです。次の文章にはどんなことが書いてある?と、もどかしく頁をめくりました。ロンドンからフランクフルトへ向かう飛行機の中でした。大げさではなく、私は救われたのです。この世に偶然などないのだ、と強く思いました。

助けてください・・・・・・

ミュンヘンに住むミディアム、ポール・ミークからファックスが来ました。「日本から手紙が来た。差出人は日本人の男性らしい。せっぱつまっているようですごく心配だ。あなたも読んでみてくれないか。どういうふうに<助けたら>いいのだろう?」という内容でした。
ファックスの内容からは意味がよくわからなかったのですが、封書に同封された航空便を読んで納得しました。白い便箋の上に英語と日本語で一言だけ書いてありました。

Please help me............助けてください。

文面とその下に広がる白い空間を見ていると、苦しい思いが伝わってくるようで、せつなさにかられました。ポールもきっとそのように感じたのだと思います。

私はポールと相談して、この方には日本のミディアムに会ってみるよう勧めることにしました。ミディアムのポールに相談してみようと思われたくらいですから、天国に行った愛する人とコンタクトを取りたがっていらっしゃると思えたからです。

幸いなことに、今は日本にも訓練を受けたプロのミディアムが増えて来ています。わざわざロンドンまで行って通訳を探す必要もなくなったわけです。日本の文化や伝統や習慣などを考慮した場合、日本人には日本人のミディアムがやっぱりしっくり来るだろうな、というのが私個人の意見です。

たとえば、もし天国の住民が、「お盆にはいつもスイカを食べすぎてお腹こわしてた」「そうめんが好物だった」とミディアムに言ったとします。お盆の環境を知らない外国人のミディアムだったらお盆やそうめんをどう説明したらいいかわからないでしょう。

名前もしかり。ポールは「日本人の名前はメッセージに届いても聞き慣れていないから残念だけど伝えられない」と言います。ジョンとかマイケルというような英語の名前だったらポールはスンナリとメッセージとしてリーディングを受ける人に伝えることができるのですけど。デモンストレーションで「あなたのお母さんはベティという名前ですね」といきなり言われてびっくりする参加者もいます。名前を正確に言えるようになると信頼度はいっぺんに上がりますから、ロンドンでポールのデモンストレーションに参加したときは「すごいな」と思いました。天国の愛犬の名前までポンポン出てきましたから。

最後に……、ポールに手紙を書かれた方が、天国から納得のいくメッセージを受けられて、心の平安を取り戻されたことを祈っています。

天国で両親が建てた家

<続き>

 ポールは、「たくさんの猫」と言いました。実家の庭に住みついていた猫たちのことが頭に浮かびました。日に何度か、サンルームのガラス戸越しに猫たちがズラリと並ぶのです。居間の椅子に座っていた母は、「早く、早くご飯をやらないと。おなかすかせているよ」とヘルパーさんや私をせかしていました。
 猫たちは、毎日エサを与えてくれるヘルパーさんが近寄っただけで「シャーッ」と威嚇するほど人間を信用していませんでした。でもヘルパーさんたちの中には無類の猫好きの人もいて、梅雨の時期など、餌が雨に濡れないように傘や金属の箱で覆って「猫食堂」を作ってくれました。
 その中で一匹だけ、おそらく引越しで置き去りにされた猫でしょうけど、いやに人に馴れた猫がいて、家の中に入ってくるようになったのです。それが後の「パンダ」です。白地に黒のハート模様のその大きなオス猫は、母のひざに座り込んで、甘えるのです。(奇跡のエピソードを残して天国の母を追った天使猫「パンダ」の話は始めのほうにあります。)
 猫たちは罠で1匹ずつ捕まえては避妊去勢を施し、それ以上増えないようにしましたが、中には捕えられたときのショックが大きすぎたのか、動物病院から連れ帰って庭に放したらそのままどこかに消えてしまった猫もいます。どこか知らないところで交通事故に遭った猫もいるかもしれません。野良猫の寿命は3年から5年、と聞いたことがあります。
 したがって、それ以上は猫の数は増えませんでしたが、ガラス越しに並ぶ猫の数が減るごとに、私は「どんな最期を迎えたのだろうか」と気になったものです。
 ポールの目に「見えた」のはその猫たちだったのでしょうか。
 
 ポールはさらに付け加えました。
「ご両親が天国で建てた家を見たら、あなたはきっとすごく驚きますよ」。
 えっ? じゃあ、実家をそっくりそのまま再現した家ではないということ? 新しいもの好きの父だったから、丸い家とか、宇宙船型の家とか? 地上で父が建てた家も考えてみれば変チクリンな和洋折衷の家でした。おまけに庭にはアヒルに亀、鳩、鶏、ヒキガエル……。両親が天国の家でも、これまで飼っていた動物や鳥と一緒だとしたら。うーむ、だったら確かに驚くような家でしょう。

天国で幸せに暮らす人たち、犬たち、猫たち・・・・・・

 先日、ポールのデモンストレーションに行ってきました。
 300席位ある会場はほぼ満員でした。ステージには花とグランドピアノがあります。ポールはデモンストレーションと呼ばれる「公開のコンタクト」を始める前にピアノを数曲弾くのです。もともと音楽家で、ピアノはプロ級。いい音楽は会場の「場のエネルギー」を高めるために効果があるのだそうです。(花も「場のエネルギー」を高めてくれるそうです。)
 そのあとポールは、「今日のコンタクトがうまくいきますように」と祈りの言葉を言い、全員が目を閉じて沈黙すること3分。ざわざわしていた会場が突然、人が消えてしまったかのように静まり返ります。
 次に、ポールがみんなをリラックスさせるためなのでしょうけど、1つか2つ楽しいジョークを披露します。これが結構面白く、後々も思い出し笑いしています。(実は、彼は普段でもユーモアがあって茶目っ気たっぷりな人なんですよ!)

 みんなが一笑いした後、いよいよ天国からのメッセージです。1時間という限られた時間の中で10人ほどにメッセージが伝えられます。これはポールが選ぶのではなく、霊の人たちが選ぶのです。だいたいにおいて、「緊急を要する参加者」が優先的に選ばれるのだそうです。愛する人を亡くして悲しみに打ちひしがれている人とかでしょうね。また、「この機会にコンタクトを取りたい」と強く願っている故人(霊界の人)がポールに合図を送るのです。メッセージを伝えたい人の頭の上に光が見えるそうです。
 
 私は参加者の表情を見たいので、会場全体を見渡せる後方の壁に近いほうに座ります。とは言ってもあまりジロジロ見ると失礼になるので、見ないふりしながら横目でしっかりと観察するわけですけど。
 前回も、すばらしくて忘れられないコンタクトがありました。
 1人は中年の美しい女性です。ベージュのシックな服といい、物腰といい、ご主人共に、いかにも上流階級といった感じで、私はこの夫婦のかもしだす雰囲気に魅了されて、デモンストレーションが始まる前から見とれていたのですけど。
 その女性に、お父さんからメッセージがあったのです。女性はポールの一言一言にうなずき、しまいには流れる涙を拭おうともせず、ほほえんで本当に幸せそうでした。その間、ご主人はずっと奥さんの手をしっかり握り締めていたのが印象に残っています。
 最後に、「あ、コーラスが聞こえます。お父様は歌を歌うのがお好きだったのでしょうね」とポールが言うと、女性は、「父はコーラスのクラブに入っていました」と答えました。

 もうひとつの印象深いメッセージは、私の斜め向こう座っていた20代半ばの男性に送られたものでした。縮れた黒髪で、浅黒い肌をした方で、北アフリカ出身でしょうか。
「お友達の方と思いますよ。メッセージを送ってきた故人の方は若い男性です。タイル床に倒れた状態を見せてくれてます。病院や家で亡くなったのじゃない、みたいですね。もしかして、ドラッグとかそういうのに関係していたのかも」。ポールはちょっと言いにくそうでした。
 会場の若い男性は驚いたように身を乗り出しました。まさか自分にメッセージが来るとは思わなかった、という反応で、「ち、ち、ちょっと待って!」のような慌てようでしたが、ポールが天国の青年の具体的な特徴を言い始めると(イレズミやピアスのこととか、風貌について)、会場の若い男性は肩を大きく震わせながら、泣き始めたのです。オートバイ仲間の友達だったようです。私も思わずもらい泣き。それに気づいた横のドイツ人は私を見て微笑み、周りの人たちもティッシュを取り出していました。ポールは最後に、「彼は天国でとても幸せなので、安心して」と男性に伝えました。

 誰かの犬も数回、現れていました。ポールは、「ぼくは霊界の動物があまり得意じゃない」と言いますが、どうしてどうして。ロンドンでのデモンストレーションのときはペットの名前まで言い当てていました。

 ところで、実はデモンストレーションが始まる前、ステージの下にポールの姿が見えたので挨拶に行ったのですが、たくさんの人に囲まれていたので、私は彼に目で挨拶をしただけでした。
 翌日、彼からファックスが来ました。
「あなたが私のところに近寄ってきたとき、年配の小柄な女性が、あなたの髪をやさしく撫でているのが見えましたよ。それを伝えたくて、デモンストレーション終了後あなたを探したのだけど見つかりませんでした。あなたのお母さんですね! にこにこしてすごく幸せそうでしたよ。あなたの真っ白な犬と―――、それに猫がいっぱい!」

(続く)

夏の夜に現れた不思議な蛍

5年ほど前のできごとです。
夕食がすんで、私たちはいつもの散歩道を歩いていました。ここドイツの7月の日没は午後9時を過ぎたころで、夜の10時になってやっと夜らしくなります。

さくらんぼうや、りんごの大木が残る古い果樹園を過ぎ、両側をブラックベリーがおおう土手に差し掛かったとき、私は夫に言いました。足もとの草むらを指差しながら。
「去年、ここで蛍を見たのよ」と。

ドイツで蛍を見たのはそれが初めてだったので、見た場所は、はっきりと覚えていました。ドイツにも蛍がいるのを知ったのはそのときだったのです。薄暗い草むらで白い光を放つ蛍を見つけたとき、驚くと同時に、蛍を見るのを楽しみにしていた父のことが思い出されました。

1年前に蛍を見た、その忘れられない箇所を見下ろしたときです。

まさしく同じところに、蛍がいたのです。
草にとまって白い光を放つ蛍が、1匹だけ。

続 あなたが散歩するとき、天国の犬も一緒に歩いています

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ポールはそれから私だけが知っている事実をいくつも語りました。私は「その通りです」と言い続けました。
1時間などアッと言う間でした。最後に、情報を伝えてくれた霊界の人々にお礼のお祈りをして終わります。終わる直前に、「何か聞いておきたいことがありますか?」と言われました。「私は愛犬を苦しませてしまいました」と言うと、胸が詰まってそれ以上は言葉が出て来ませんでした。病気で苦しんでいるとき安楽死をさせなかったという後悔に私は苦しんでいたのです。

「あなたの愛犬は今、病気も苦しみもない天国にいるのですよ。苦しみは過去のものなのですよ。今あなたが苦しみを思い出したとしても何の助けにもなりませんよ」。そう言うポールも、私の苦しい気持ちが伝染したのか、顔を真っ赤にして涙を浮かべていました。彼の両手が私の手を再び包みました。

それがポールとの最初の出会いです。
その日、ポールの書いた本が発売されていることを知って早速購入して読みました。半年後、私は彼の本を邦訳することになって、彼との交流が始まりました。とは言っても、本の内容で理解が難しい部分を明確にするために会うのですから、「私の愛犬は今、どうしていますか? 誰が面倒みているのでしょう?」なんて聞けません。

しかし私の願いは聞き入れられました。
テラスのテーブルで本の内容について話し合っているとき、ポールは突然、身をかがめ、足元の空間を「撫で始めた」のです!

「あなたの愛犬、ここにいますよ」

と、彼は普段の口調で言いました。それは、このケーキ美味しいですね、という口調と変わりなかったので、私は一瞬、「え?」と思いました。

ポールは透明な空間を繰り返し、撫で、「真っ白で、目が真ん丸」と言いました。「感極まる」とはこのことです。私も手を伸ばして私のコロを撫でました。やさしく、ゆっくりと。いつもそうしていたように。
コロの毛は絹のように柔らかでした。

あなたが散歩するとき、天国の犬も一緒に歩いています

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ポール・ミークは子供のころから、この世の人ではない人たちを見ることができたのだそうです。それは彼にとってごく自然なことでした。貧しくはあったけれど、家族をはじめ、教会の人も周囲の人も彼の霊能力を暖かく見守っていたので、彼はもともと大好きだった声楽だけでなく霊能力のほうも同時に追求していく幸せな環境に育ちました。

初めてポールに会ったときの彼の笑顔を忘れることはできません。私は初めて霊能者と呼ばれる人に会うので緊張していましたが、彼は私の緊張を解きほぐすためか、ちょっと雑談をして、それから2階の「リーディングの部屋」に案内してくれました。

こじんまりした部屋には花が活けてあって、木のテーブルにティッシュペーパーが置いてあります。「涙を拭くためだな」と思いました。それから、1時間近いリーディングを録音するためのテープレコーダーがありました。私は持ってきたカセットテープをポールに渡しました。

ポールはまず私の手を両手で包み、目を閉じてお祈りしました。精霊のみなさま、どうかうまく天国からメッセージがもらえるようご協力ください、という内容でした。

ポールはすぐに私の父のことを話し始めました。父の持病のこと、入院してから亡くなるまでの状況、性格などです。あなたのお父さんです、と言われたわけではありませんが、そこまで内容を知らされてそれが私の父であることは100%納得がいきました。もちろん、ポールは私の父が数年前に亡くなっている事実など知るわけはないのです。彼に知らせてあったのはアポイントを取るのに必要だった私の名前だけですから。

リーディング(SITTING)を受けるほうからミディアム(霊と交信する人)に情報を渡すことはタブー中のタブーです。そんなことしたら、どこからどこまでが天国からのメッセージなのかわからなくなってしまいますから。

「あなたのお父さんは、ある分野の専門家でした。今は天国で、そのときの教え子の人たちと一緒にいます」と彼は言いました。
 私の父は化学者でした。戦前、旧満州の大学で化学を教え、教え子たちとは戦後も連絡を取り合い、同窓会を中国で開いたこともあります。父が旧満州で過ごした時期は父が最も輝いていたころだったと思います。
<続く>

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